いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


──え?

はじめ、さん?

彼女は、いち君のことを東條さんと呼んでいたはずだ。

カンプを持って行った時だって、そう呼んでいた。


「え、と……」


混乱し、答えあぐねていると、吉原さんは「ごめんなさい。忘れてください」と微笑んだ。

忘れられるわけがない。

もしかして、私と同じように仕事とプライベートの呼び方を分けているのだろうか。

だとしたら、いち君と吉原さんは親しい関係、ということ?

……親しいって、何。

待って、落ち着こう。

気になるならいち君に確認すればいい。

でも今は仕事中だ。

せめてこれから始まる打ち合わせが終わってから、メッセージでも打っておこう。

冷静に。

仕事に集中しなければ。

私はゆっくりと息を吸い込み、余計なことは考えないようにと、以前と同じ企画部のミーティングルームに足を踏み入れた。


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