いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「最初はその"さゆ"って子と知己で何かあったのかと思ってからかってたんだけどな。ある日、ずっと大切に想ってる子と同じ名前だって打ち明けられたんだ」


優しい声色で羽鳥さんが打ち明けてくれたのは、いち君の想いだった。

真っ直ぐで切なくて、苦しい、私への想い。


「実は、その話を聞くまではじめは完璧過ぎてつまらないやつだって思ってたんだ。何でも思い通りにやってんだろうなって。でも、違った。はじめは、思い通りにいかない中で、それを見せずにもがいてた。いつかまた、君に会う為に」


電車の通過を告げるアナウンスが聞こえる中、私は今までのことを思い出す。

いち君も、美波ちゃんも言っていた。

ずっと私に会いたかったと。

私の為に頑張ったのだと。

そして、今また羽鳥さんも同じ事を言う。

羽鳥さんはコーヒーをぐいっと喉に流し込むと、笑顔で告げる。


「はじめの頭はいつだって君でいっぱいだ。心は真っ直ぐに君に向かってる」


胸が苦しい。

わかっていたはずだ。

彼の想いは嘘じゃない。

向けられた言葉にも確かな愛情を感じられていた。


「じゃあ、何で……」


過去の彼の想い、今の彼の想いが真実であるというのなら、なぜ吉原さんと。

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