いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
仕事のような定型文なら難しくはないけれど、友人や家族、恋人に宛てるとなると何をどう書いていいのかわからない。
そもそも、私は昔から自分を表現するのが苦手だった。
だからかもしれない。
グラフィックデザイナーという仕事を選んだのは。
自分をアピールするのは苦手だけど、絵を描くのは好きだし、インテリア等を魅力的に見せたりするのも好きだ。
ならば、そこに少しずつ自分らしさを見つけていけるのではないか。
そんな想いから、私は専門学校に通い、現在は小さなデザイン事務所で働いている。
私はまだ未熟で、ハードな業務に悲鳴を上げそうになる日もあるけれど、事務所で働く先輩たちの人柄のおかげでどうにか頑張って続けられている状態だ。
で、自分らしさはまだよくわかってないのが現状で。
「とりあえず、花言葉を調べようかな」
独りごちると、私は再びスマホを手にした。
そして、探していた花言葉はすぐに見つかる。
花の名前と写真が掲載されたページの下方。
花言葉と記載された横に表示されたそれは……
【情熱】
【あなたは魅力に満ちている】
【あなたしか見えない】
どれも恥ずかしくなるもので。
とてもじゃないけど、調べましたなんていち君には言えそうになく。
結局、手紙は書かずに昨日交換したアドレスに感謝のメールを送った。
あえて花言葉については触れずに。