いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
カーテンも開けていない薄暗い部屋に溜め息が落ちる。
せめて光を入れて気持ちを少しでも上げていこうと、クリーム色のカーテンに手をかけた時だ。
室内に、玄関チャイムの音が鳴り響いた。
時計を見れば針はそろそろ午前十時を指すところだ。
郵便屋さんか何かかもしれないと、手早くカーテンを開けて部屋を明るくすると、私は玄関越しに「はい」と声をかける。
すると、応えたの郵便屋でも宅配便でも新聞の勧誘でもなく。
「沙優、ごめん。いちです」
会いたくないと思っていた相手のものだった。
扉越しに会話するのもおかしいので、私はゆっくりと深呼吸してからドアノブを捻る。
すると、太陽の陽に髪を照らしたいち君が申し訳なさそうに微笑んだ。
「ごめん、いきなり来て。その、心配だったからお見舞いと、あとこれ適当に買ってきたんだ」
そう言って持ち上げた手には紙袋。
チラリと見えた中には、飲み物や果物等が入っている。
「ありがとう……」
まさか帰れとは言えず、紙袋を受け取ると私は彼に上がるように言った。