いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


本当は、心配して来てくれたことが少し嬉しい気持ちもあるからかもしれない。

でもやはり、彼の瞳をいつものように見ることはできず、私はなるべく別のところを視界に写す。


「体調はどう?」

「少し疲れが溜まってるだけだから、大丈夫」


気遣う声に私は愛想笑いを浮かべながら、テーブルに荷物を置いた。

いち君は手伝うよと言って、袋の中の物を取り出してくれる。


「風邪のひき始めかな。他に何か必要なものはある? ああ、ご飯でも作ろうか。お粥ならよく美波や大地にも作ってあげてたし」


スポーツドリンクのペットボトルをテーブル上に置く彼の綺麗な指から視線を外し、私はそれらを冷蔵庫にしまいながら首を横に振る。


「大丈夫。そこまで心配しないで。こうして動けるし」


そう言って振り返った直後、いち君が「熱は?」と口にしながらこちらに腕を伸ばしてきた。

触れられる。

悟った刹那。


──パシン。


私は思わず、彼の手を払ってしまった。

いち君の顔が驚きに染まり、動きを止めている。

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