いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
どのくらい、一人で泣いていたのだろう。
朝食も昼食も摂らずにひたすらベッドで横になっていたら、またしても玄関チャイムが鳴った。
まさかいち君が、と思ったけれど、彼はそこまで身勝手な人ではないと思い直し起き上がる。
すると、ドアの向こうから「沙優ちゃん、いる?」と知ってる声が聞こえて、私は急いで扉を開けた。
オレンジ色に染まる空。
その色をほんのり纏って立っているのは、隣りに住む仁美さんの娘、チエミちゃんだ。
「ごめん、横になってて」
「そっか。これ、ママが沙優ちゃんに持って行ってあげてって」
そう言って、彼女は小さめのタッパーを二つ私に手渡した。
ほんのりと温かく、チエミちゃんに尋ねると煮物と唐揚げが入っているのだと教えてくれた。
「ありがとう」
仁美さんは仕事に行く前に夕飯の準備をしていく。
そして、時々こんな風に私にもおすそ分けをしてくれるのだ。
今日はまだ何も食べてないし、作る気力もなかったので本当に助かるなと、ありがたく感じていたらチエミちゃんが私をジッと見つめて……
「泣いていたの?」
直球で聞いてきた。