いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
真実に触れる夜
「あなた、まだ決めてないの?」
日曜日。
お盆休みだからと実家に帰省してすぐのこと。
夕陽の差し込むリビングのソファーに腰掛けた私は、母からのその後はどうなのという質問に「まだ決めてない」と答えたら、呆れた顔でそう言われた。
「一応進展はしてるよ」
どうなるかはわからないけど、と心の中で付け足す。
「まあまあ、いいじゃないか。悪い方向には向かってないんだろうし」
腕時計を装着しながらニコニコとフォローしてくれる父に、すでに出かける支度を終えた母が頭を振った。
「そうも言ってられないのわかってるでしょ」
注意された父は何かを思い出したようで「あー、そうか」と零す。
母は、私が疑問に思い口を開く前に話してくれる。
「実は先週、東條さんの秘書さんからうちに電話があって、縁談はなかったことにできないかって聞かれたのよ。なんだか頭にきたからハッキリ断ったけど」
それを聞いて私は顔をしかめた。
まさか実家にまで手を回していたとは。