いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
綺麗で真っ直ぐな心根を持っていたいち君のお母さん。
そんな母親に似たいち君。
東條社長は、苦しかったのだろうか。
そしてもしそうならば、今も苦しいのだろうか。
答えはわからない。
きっと、教えてもらえるものでもないだろう。
だけど今、少しだけ東條社長の気持ちが理解できる。
外見も心根も綺麗ないち君に、私は釣り合わない。
どんと構えていられず、取り乱して中途半端に責めるような私では、きっと。
釣り合うようになる為には、努力しなければならなくて。
でも、それに疲れてしまったら?
東條社長は、どこかでボタンを掛け違え、だから誤ったのではないか。
そんな予想を勝手にして、ワンボックスカーの後部座席に乗り込んだ。
私は、私のままでいい。
わかっているのに、吉原さんの存在が私を焦らせる。
私は二人にバレないようにそっと溜め息を吐き出して、ウインドウ越しに流れる夕暮れの街並みをぼんやりと眺めていた。