いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「今これを見せるのもズルいとは思うけど、でも、君を他の誰かに渡したくないし、俺は君だけがいいから」
私の心を捕らえておく為なのだと、これ以上ないほどの甘やかな笑みを浮かべた。
キュウッと切なく胸が締め付けられて、私は頭を振る。
ズルくないよ、と。
すると、いち君は手紙を広げたままの私に「本当言うと、嬉しかったんだ」と告げた。
何を指しているのかはかりかねていれば、彼は秘密を漏らすように形の良い唇を動かして……
「君が苦しんでくれたのが。愛してるって、言われてるみたいだったから」
切なげな瞳で、口元を綻ばせた。
トクントクンと胸が高鳴って、想いが溢れていく。
心が彼への愛情で満たされていく。
苦しいのが嬉しい、なんて。
恐ろしい言葉だけど、ああ、その通りだと思った。
私の中の苦しいという痛みは、愛しいから生まれたものだから。
大切に思うから、苦しい。
けれど、苦しくても……
「だって、愛してるもの」
愛があるから、あなたの側にいたいのだ。
私の告白にいち君はとろとろに蕩けた顔をし、片膝をついたままの体勢で私を抱き寄せた。
しゃがんで手紙を開いていた私は当然の如くバランスを崩し彼に体重をかけてしまう。
尻餅をついたいち君は、そんなこと御構い無しに私を離さないとばかりに抱き締めて耳元で囁いた。
「俺も愛してる」
苦しくて、どうにかなりそうなくらいだと泣きたいような笑いたいような声色で続けると、こめかみに、額に、頬に、柔らかな唇を落とす。
そうして、視線が甘く絡み合えば、私たちは約束の木をバックに、どちらからともなく互いの唇を重ねた。