いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
今夜、ラブレターを
口紅のパッケージが完成した。
特に問題もなく先日無事に明倫堂に送られて、残すは請求書の作成と後処理のみだ。
店頭に並ぶのはもう少し先になるけど、初めて一から任せてもらえた商品なだけに、今から楽しみで仕方ない。
でも、それと同じくらいに不安もある。
それは、お客様の反応が悪かったらどうしよう、というものだ。
先日、ふとそんな弱音を零したら『社内でもウケはいいからきっと大丈夫。うちの広報も売り出すのを楽しみに動いてるよ』と、いち君に励まされたのは記憶に新しい。
私は彼のことを思い出し、腕時計を確認する。
明日は土曜日。
いち君とのデートをする予定の日だ。
いつもは当日に待ち合わせをするのだけど、今回は前日、つまり今夜からの約束になっている。
彼の家に一泊して、明日はゴロゴロする予定なのだ。
事務所内でディレクターがクライアントと電話で話す声が聞こえる中、腕時計を確認する。
現在、午後六時二十六分。
この調子なら八時には帰れそうなので、それを知らせるべく私は鞄からスマホを取り出した。
ちなみに、無くしたスマホは私が帰った日、車を掃除していた父が後部座席のシートの隙間に入っていたのを見つけてくれたらしく、別荘で一泊し帰宅したところに速達で送られてきた。
おかげでもう一台用意しなくて済み、昨日お礼にと父の好物である中華街の肉まんを郵送したら母が私のはないのかといじけたのも記憶に新しい。