いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「……いち君も早く上がれるんだ」
彼から送られてきていたメッセージを見て思わず声を零す。
タイムカプセルを掘り起こした夜。
私たちはそのままいち君の別荘に泊まった。
そしてその夜、私はいち君と初めて肌を重ね合わせ、よく朝、彼の腕の中で目を覚ました。
タイムカプセルに入っていた手紙のこともあるのか、彼の体温や、彼に愛される喜びを知ってしまったからか。
私は、以前よりも明らかにいち君のことが好きでたまらなくなっている。
今も彼を想って口元が綻んでしまうと、隣りの席で仕事をしている最近髭を伸ばし始めた同僚が、訝しげな目で私を見ていた。
愛想笑いで誤魔化し、素早くいち君にメッセージを送るとまたパソコンと向き合う。
本当、私はかなりいち君に心を奪われてしまったなとこっそり苦笑しつつ、マウスを握ったのだった。
──ぐん、と腕を上げて伸びをする。
あとは来週の企画会議で使う資料を人数分に分けてまとめるだけ。
二十分もすれば帰れると、最後の力を振り絞り出すようにマイタンブラーを口につけた時だ。
「あの、真山さん、東條さんがいらしてますよ」
事務の女性が私に耳打ちして、思わず冷めた紅茶を吹き出しそうになる。
え、終わったら連絡するから外で待ち合わせじゃなかったのかと慌てて立ち上がれば、クラシックなスリーピースのスーツを纏ういち君が、ニコニコ笑顔の金子社長とオフィスの中へ入ってきた。
彼がいるだけで一気にこの場の雰囲気が華やぐ。