いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「それ……口紅の効果?」
コンセプトである【唇にプロポーズ】のことを口にすると、いち君は小さく笑って今度は頬に唇を落とす。
「実は、沙優にプロポーズするつもりだったから作ったんだ」
突然暴露された制作秘話に私は「えっ」と声をあげる。
いち君は優しく目を細めた。
「君の人生は君のものだ。俺が無理矢理奪っていいものじゃない。だから、どんな決断でも受け入れるよ」
けれど、言葉とは裏腹にイエスの返事を強請るように首筋に唇を這わす。
「それ、お見合いの時と言ってることが違う」
指摘すると、いち君は耳元に唇を寄せた。
「だって、君はもう迷ってないはずだから」
確信してるからこその言葉だと、そんな言い方をしている彼に笑ってしまう。
でも、もっとズルいのは甘い甘い口づけで思考を蕩けさせて、色よい返事を引き出そうとしていること。
「それで、答えは?」
と言っても、蕩けていようが寝ぼけてようが答えは一つだけ。
彼の頬を両手で包み込んで自分から軽く唇を合わせると「お受けします」と微笑めば。
幸せでたまらないとばかりに私を強く抱き締めるいち君。
そして、彼は囁き愛を誓う。
「君が俺の手を掴んだあの日、君は俺の心も掴んで、それからずっと掴まれ続けてる。今度は俺の番。しっかりと握って掴んで二度と離さないから、覚悟してて」
低く甘い声で紡がれた想いに、私の方こそ死んでもいいなんて思えるくらい幸せなんだけど、それを言葉にするのは恥ずかしい気がするから。
だから、今夜あなたが寝静まった頃に綴ろうか。
あなたに送る
初めてのラブレターを。
- FIN -