いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「それ……口紅の効果?」


コンセプトである【唇にプロポーズ】のことを口にすると、いち君は小さく笑って今度は頬に唇を落とす。


「実は、沙優にプロポーズするつもりだったから作ったんだ」


突然暴露された制作秘話に私は「えっ」と声をあげる。

いち君は優しく目を細めた。


「君の人生は君のものだ。俺が無理矢理奪っていいものじゃない。だから、どんな決断でも受け入れるよ」


けれど、言葉とは裏腹にイエスの返事を強請るように首筋に唇を這わす。


「それ、お見合いの時と言ってることが違う」


指摘すると、いち君は耳元に唇を寄せた。


「だって、君はもう迷ってないはずだから」


確信してるからこその言葉だと、そんな言い方をしている彼に笑ってしまう。

でも、もっとズルいのは甘い甘い口づけで思考を蕩けさせて、色よい返事を引き出そうとしていること。


「それで、答えは?」


と言っても、蕩けていようが寝ぼけてようが答えは一つだけ。

彼の頬を両手で包み込んで自分から軽く唇を合わせると「お受けします」と微笑めば。

幸せでたまらないとばかりに私を強く抱き締めるいち君。

そして、彼は囁き愛を誓う。


「君が俺の手を掴んだあの日、君は俺の心も掴んで、それからずっと掴まれ続けてる。今度は俺の番。しっかりと握って掴んで二度と離さないから、覚悟してて」


低く甘い声で紡がれた想いに、私の方こそ死んでもいいなんて思えるくらい幸せなんだけど、それを言葉にするのは恥ずかしい気がするから。


だから、今夜あなたが寝静まった頃に綴ろうか。


あなたに送る


初めてのラブレターを。






- FIN -

< 251 / 252 >

この作品をシェア

pagetop