いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「ねえ、小学生の頃、私がいち君の名前を間違えて呼んでたことに気づいて謝った時、いち君はそのまま呼んで良いって言ってくれたでしょ?」
あれはどうしてと、今更ながらに問いかければ、いち君は甘くて優しい笑みを浮かべる。
「特別な感じがしたから、かな。俺をいちって呼ぶのは、世界で君だけなんだ」
世界で君だけ、なんて。
そんな風に言われて嫌な気持ちになるわけもなく。
けれどどう答えていいかわからずにいたら。
「そろそろお昼ご飯にしようか」
微笑みながら、いち君は私の手を引いてすぐ近くに伸びる芝生に移動した。
そして、持っていたトートバッグからレジャーシートを取り出して敷く。
「わ、準備がいいね」
「今日はここで過ごすつもりだったんだ。さあ座って」
促され、空の色に似たレジャーシートの上に座ると、いち君も私の隣に腰を下ろして胡座をかいた。
次いで、またもやトートバッグの中に手を入れる。
取り出したのは、風呂敷に包まれた四角いもの。
まさかと眼を見張ると、いち君はニコニコしながら風呂敷を広げて……
「はい、お弁当作ってきました」
二段になっている重箱の蓋を開けた。
現れたのは色鮮やかな料理たち。
食べやすそうなサイズに握られたおむすびにおいなりさん。
小分けの容器にはサラダやひじきの煮物、エビマヨ等が詰められている。
定番の唐揚げに卵焼き、野菜炒めと、彩りにもなるプチトマトやブロッコリーがバランスよく並べられていて。
「凄い!」
思わず瞳を輝かせてしまう。