いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
大きめの荷物だなと思っていたけど、正体はお弁当だったとは。
しかもこれ、どう見ても手作りっぽい。
「いち君お料理できるんだね」
その上どれも美味しそう。
「弟と妹が家庭料理に飢えてて。お手伝いさんのじゃないのがいいって言うから、作るようになったんだ」
弟と妹。
彼の口から出たのは、彼と年の離れた双子のことだ。
お転婆な美波(みなみ)ちゃんと、彼女の後ろに隠れてる気弱な大地(だいち)君。
美波ちゃんは私を『さーちゃん』と呼んでくれてて、彼の家に遊びに行った時は一緒に遊んだっけ。
「二人とも元気?」
「元気だよ。今はもう大学生だけど、時々頼まれてまだ作ってるんだ」
いち君によく甘えていた二人の姿を思い出して、確かに頼んでそうだなとなんだか納得した。
「二人とも沙優に会いたがってるよ。特に美波は君のこと大好きだったからね」
「私も久しぶりに会いたいなぁ。よろしく伝えてね」
「ああ、伝えておく。喜ぶよ」
食べてみてと勧められ、いただきますとお箸を手に取る。
まずはエビマヨをひとくち。
これがとても美味しくて。
「めちゃくちゃ美味しいよ!」
少し興奮気味に褒めると、いち君は胸をなでおろし微笑んだ。
そして、自分も卵焼きを食べると私を見つめる。
「どうかな? 旦那さんとしてポイント高い?」
これにはさすがに首を縦に振るしかなく、素直に「高得点です」と認めれば、彼は満足げに頬を緩めた。