いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
豪快に笑いながら喜ぶうちの社長に向けていた彼の視線がちらりと私を捉える。
そして、意味ありげに浮かべていた笑みを深めた。
デートした時、確かに聞いた。
彼はお父さんの会社を継ぐために頑張っていると。
そして、最近は会社が扱う商品の勉強のために企画部に移動したとも。
いち君のお父さんは化粧品会社を経営している。
それは小学生の頃に母から聞いていて覚えていたけど……
「こんな利発なお方が後継者なら、明倫堂も安泰ですな!」
まさかいち君が、国内シェアナンバーワンと言われている【明倫堂】の御曹司様だったとは。
彼は自分の父親のことをあまり話したがらなかったから、私も深く追求したことはなかった。
転校してしまってからも、ストーカーみたいなことはしたくなくて、きっと知っているであろううちの両親にも聞いたりしたことなかったし。
ただ、そういえばお家がかなりの豪邸だったな、とか。
お母さんの持ってる化粧品は明倫堂の物が多いな、とか。
今更ながら思い出して、心の準備をしていたはずなのに、いとも容易く乱されている。
で、でもまあ、この程度のサプライズならば驚きはしたものの楽しめる範囲──
「それで、今日はご挨拶とは別に一件ご相談がありまして」
「なんですかな?」
「彼女に、弊社の新作商品のパッケージデザインをお願いしたいんです」
ではなさそうです!