いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
──結局、いち君からの仕事を引き受けることが決まり、後日打ち合わせをすることになりまして。
「はぁ〜……疲れた」
会社のみんなに根掘り葉掘り聞かれた私は、仕事が捗らずいつも以上の残業になり、足を引きずるようにして帰宅した。
お気に入りのリボン付きパンプスを揃えることもせず脱ぎっぱなしにし、鞄をダイニングテーブルに置くと、そのままベッドにダイブする。
スプリングが軋んだ音を立てて体を受け止めて、私はうつ伏せの状態でため息を零した。
いち君が帰った後、本当に大変だったのだ。
ただの幼馴染には見えない。
実は付き合っているんじゃないか。
白状しろとせっつかれて。
社長に至っては『これでうちには明倫堂の仕事がたくさん入るな』なんて、本気とも冗談ともつかないことを口にする始末。
実はプロポーズされてるなどと言えるわけもなく、私はひたすら小学生の頃からの付き合いですと苦笑いしてかわし続けたのだ。
明日は金曜日。
また好奇の目で見られ、からかわれたりするのかと思うと少し気が重い。
せめて土曜日であればと考えるも、土曜は土曜でいち君とのデートがある。
実はさきほど、電車に揺られていたら【土曜日は仕事のことは忘れて楽しもう】というメールが彼から届いた。
確かに、休日くらいは仕事を忘れて過ごしたい。
でも、今回ばかりは少し文句を言わせてもらいたいところだ。