いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
『俺は、君のことになるといくらでもずるくなれるんだ』
ずるくなれる、なんて。
耳元で吐露された言葉は一途さをアピールしていて、今思い出しても気恥ずかしい。
でも、やはり腑に落ちないのだ。
十二年も経って、いきなり現れて。
なぜ、私と結婚したいのか。
きちんと聞くべきだろうけど、はぐらかされるような気もして。
それでも、そこは知っておかないといくらデートを重ねても納得はできないから。
ベッドサイドテーブルには、策略を仄めかしていたクレマチスの花が、我関せずと下を向いて咲いている。
それをぼんやりと眺めるも、明日も朝早いことを思い出して。
「明後日、タイミングを見て聞いてみよう」
独りごち、私は疲れた体に鞭を打ち起き上がるとお風呂場へ足を運んだのだった。