いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「遊園地なんて久しぶり」
休日の為、園内はそれなりに混んでいるようで、アトラクションの音に賑やかな声が重なって聞こえてくる。
普段、そんなに遊園地に来たいとは思わないけれど、来ればテンションが上がってくるものだ。
心弾ませながら、さて、何から乗ろうかと相談する為に隣を歩くいち君を見上げれば。
「俺は初めてだよ、遊園地って」
意外なことを口にした。
「初めてなの!?」
元々遊園地ではじゃぐような人ではなさそうだけど、それでも一度も経験がないというのは意外で目を丸くした私に、いち君はさも当たり前だというように頷く。
「そうだよ。初めて。沙優と行きたかったから、誘われても行かないようにしてたんだ」
私と行きたかったから……って。
「それって、本当?」
「本当だよ」
「会わなかった間も?」
「会わなかった間も」
おうむ返しに答えたいち君は微笑んでるけど、私は彼の隣で複雑な気持ちを抱えていた。
行きたいと、そう思って行かずにいたと言うなら、なぜ連絡さえなかったのか。
嘘をつくような人ではなかったと思うけど、さすがにこれはただのリップサービスなのかもしれない。