いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
行ったことがないのは本当。
でも、私と行きたかったからというのは冗談。
そう結論付けると、私は気持ちを切り替える。
せっかく楽しい場所に来たのだ。
悶々と悩むなんてもったいない。
「じゃあ、いち君の初遊園地。たくさん楽しもうか」
笑顔を向けると、彼は破顔させて。
「乗ってみたいのがあるんだ」
私の手をとり、指を絡めた。
公園でのデートの時とは違う恋人繋ぎに心臓が戸惑い跳ねる。
好きになってもらう為のアピールなんだろうけど、少しずつ大胆になってくるそれに順応できない。
でも、やめてと跳ね除けるような不快感はないというか、ドキドキしつつ受け入れてしまっているあたり、私はいち君を嫌いではないのだ。
なんで、どうしてと思うことはいくつかあるけど、ひどい、嫌いという思いはない。
あの頃からあるのは、悲しい、寂しいといった思いで、それは彼を想うからこその感情。
私は、いち君を嫌いにはなれない。
そう感じながら、彼に引かれて活気溢れる園内へと入場したのだった。