いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
今夜は月も星も強く輝いている。
朱色に染まる私が、いち君にはよく見えているだろう。
これ以上、彼の前に立っていたら、彼のペースに巻き込まれて醜態を晒してしまうのではと思い至り、私は「あ、ああありがとう!?」と完璧に動揺した声を出し、花束を抱えてそそくさとアパートへと踵を返した。
今日は楽しかった、とか、色々とお礼を言ってないことに気づいたのは、玄関の鍵をドアノブに差し込んでいた時で。
私は家に入るとすぐに、下駄箱の上に貰った花束を置いて、スマホをショルダーバッグから引っ張り出す。
そして、靴も脱がないまま、まだ運転を再開したばかりであろういち君に、急ぎお礼のメッセージを送った。
いつだっていち君はどこか余裕があって、かっこよくて。
私はそんな彼に振り回されっぱなしで。
スニーカーの紐を解きながら息を吐き出すと、花束の隙間に上手く入れ込まれた手紙が視界に入った。
手を伸ばし、手紙を手にするとさっそく開封しながら床を踏みしめダイニングチェアへと向かう。
そうして手紙を開くと、いち君の綺麗な文字が目に飛び込んできた。