いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「気になる?」
「……ちょっとだけ」
なんて、本当は結構気になっているのだけど、素直に伝えることができなくて、私は涼しい顔で小首を傾げた。
こういうところ、自分でも可愛げないと思う。
だけど、いち君は全てお見通しとばかりにクスクスと笑った。
「俺の心にはずっと沙優がいるんだ。だから、何も心配しないで」
甘い言葉につい頬を染めてしまうけど、私は唇を僅かに尖らせる。
「ずるい。それ、答えになってない」
「そうかな? あ、イルカショー始まるみたいだ。行こう」
どこか誤魔化すように、私の手を引いたいち君。
でも、"心にいる"なんて。
そんな風に言われたら抗議を続けることもできず。
何より、私だって高校の頃はいち君のことを引きずりながら初めて彼氏を作ったのだ。
だから、彼を追求するのも違う気がして。
「まだ席空いてるかな?」
私は、彼の誤魔化しに乗り、その大きな手を握り返した。