いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
クライアントが望むものを作る。
それが私たちグラフィックデザイナーの仕事だ。
あれから私はたくさんのサムネイルを描いてアイデアを出した。
その中からコンセプトに合うものをうちのディレクターと相談し、いくつか選んで数点のラフを作成。
そしてそのラフを元にしたカンプと呼ばれる完成見本がようやく仕上がったので、今日はこれからプレゼンを行うことになっている。
今回はいち君以外の企画部の方も同席となるようで、私は少し緊張しながら明倫堂を訪ねた。
実は本来、プレゼンの時はディレクターが同行して一緒に説明してくれる。
けれど今回は他社と競うコンペではないということもあり、経験を積んで来いと私一人に任された。
上手く説明できるか不安だけど、準備はしっかりしてきたし、精一杯頑張ろう。
「お越しいただきありがとうございます」
ウェイティングスペースで待つ私を迎えてくれたのはいち君ではなく、吉原さんだ。
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。みんなカンプを見れるのを楽しみにしてました」
女の私も見惚れてしまうような美しい顔に極上の笑みを浮かべた吉原さん。
彼女は「こちらです」と、これからプレゼンを行う企画部の会議室へと案内をしてくれる。