いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~

とろける眼差し



それは、金曜の夜のこと。

明日はいち君とデートの日なので、出来るだけ早く帰りたい私は、デザインソフトを駆使してデザインの修正を急いでいた。

あと少し、キリのいいところで帰ろうと色味を調整していた時、デスクに置いていたスマホが規則正しいリズムで震え、着信を知らせる。

現在の時刻はもうすぐ午後十時。

この時間に電話がくることは珍しく、一体誰からだと画面を見れば、そこに表示された名前は【東條 一】、いち君だ。

もしかして、明日のことで何かあるのかと思い、私は急ぎ立ち上がると廊下に出た。


「もしもし?」


スマホ越しに応答すれば、聞こえてきたのはいち君の穏やかな声……ではなく。


『あ、どうもどうも。俺、羽鳥(はとり)というものですけど、実ははじめが酔いつぶれて君の名前呼んでるから来てやってくれないか?』


いち君の友人らしき人をだった。

酔いつぶれて私を呼んでるとか、ちょっと恥ずかしい。

でも、それと同時に嬉しくもあって、私は「場所はどこですか?」と羽鳥さんという人に確認する。

聞けば遠くはなく、ここからなら三十分もあれば行ける場所だ。

ただ、まだ仕事が残っている。

そのことを告げると、羽鳥さんは『一応バトンタッチするまではこいつといるから、よろしく』と言い残し。


「ちょ、え」


戸惑う私に構わず、通話を切った。


「もう……仕方ないなぁ」


とりあえず、今日はもう切り上げて月曜日は少し早めに出社しよう。

そう決めると、私は踵を返し、酔いつぶれたいち君の様子を見に行く為、帰り支度を始めた。



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