悲劇のヒロインなんかじゃない。
「理由をうかがっても?」


ジリジリと痛む胸を抑え声をだす。震えてはいないはずだ。


「…あなたには何の落ち度もない。ただ、僕には、愛する人がいる。彼女、佐知以外と結婚なんて、僕にはできない」


そう言って青嶋さんは後ろにいる彼女の手をとった。


彼を潤んだ目でみあげ、見つめあう二人。


何なの?


何、この二人だけの世界を作ってるの?


私が何も言わず二人をみていると青嶋さんは再度私に向かい


「このまま薫さんと結婚をしても、お互いに幸せになることはできない。愛のない結婚だなんて、不幸になるだけだ。」


その言葉に私は反応した。


「…愛のない…?」


「そう、僕達は樋口社長に言われ、ビジネスも兼ねての婚約だ。君にとっても不本意なものだったはずだ。そんな僕達が結婚しても…」


「勝手に決めないでください!」
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