昼の雨
その子は伏し目がちに俯いている。
「え、なんで…………」
戸惑う僕に、茅野さんの母親の向かい側に座っている父が言う。
「楓。早く座りなさい。」
「え、あ……、はい。」
僕は茅野さんに軽く一礼をし、客間へと足を伸ばす。父の後ろを通り、座るときにもう一度一礼をしてから腰を下ろす。
そんな僕の動作を見て茅野結華の母親は笑顔で世辞を言う。
「まぁ。さすが裕一郎さんのお子さんですね。礼儀がとても良いわ。」
裕一郎というのは僕の父だ。
「昔から躾ておりますから。」
その言葉を聞き、僕は一瞬笑顔を忘れてしまう。
その一瞬に俯いていた結華と目が合う。癖で笑顔になる。助かった。
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