恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
  やっと一息ついて時計を確認すると、自分の業務終了時間まであと30分を切っていた。
 
 イベントの準備や利用者さんへの対応で残業になることも多々あるけれど、そうではないときは無駄に残業をしない、というのが今の館長のスタンスだ。
 なので私は給料泥棒になる前に自分の仕事を終わらせようと、残りの作業を終わらすべくスピードをあげた。
 
 さっきまで会議室で来週の催しの打ち合わせをしていた。催しで使う蔵書の選定が終わって、メンバーの先輩たちが持ち場へと戻って行った。私は打ち合せで使った本を片付けることを自ら申し出たのでまだ会議室に残っていた。
 2階の会議室から1階の保管場所まで本を戻す、これが今日最後の仕事だ。

 この図書館の中で一番の新人の私はそういった雑務を積極的に請け負うことが多い。
 それに不満はない。出来る仕事の少ない自分が、誰にでも出来るような雑務を片付けることで全体の業務が円滑に進むと思うから、積極的に引き受けることを心掛けている。

 
 「急いで片付けなきゃ」

 自分しかいない会議でつぶやくと、一気に全部の本を抱えて肘と足を使ってなんとかドアを開けた。
 会議室の目の前には1階に下りる階段がある。右手側の奥にはエレベーターもあって、普段は蔵書をワゴンに乗せてエレベーターで上り下りするのだけれど、利用者さんも使うものなので、基本的に利用者さんでいっぱいの時は見送って次まで待ったりする。
 急いでいた私はそのまま目の前の階段へと足を踏み出した。

 
< 12 / 283 >

この作品をシェア

pagetop