恩返しは溺甘同居で!?～ハプニングにご注意を!!

　「修平さん…」

　彼の名を口にした私の声が震えている。

　そんな私を、彼は恐る恐る、壊れ物に触れるようにそっと抱き寄せた。
　反射的に身を固くしようとした私に

　「おびえないで…杏奈の嫌がることは絶対にしないから。」
　
　耳元で囁いた彼の声が掠れている。
　あくまで優しくそうっと、宝物を守り抱くようなその腕に、私はそっと体の力を抜いた。
　身を委ねるように修平さんの胸に自分の額を着ける。
　すると、彼の体からも力が抜けるのを感じた。

　もしかして、修平さんも緊張していたの？

　長い間彼の腕に囲まれていた。
　ピタリとくっついている彼の胸から少し早い鼓動の音が聞くえてくる。
　瞼を閉じてその規則正しい音を聞きながら彼の温もりに包まれていると、段々と思考がぼんやりとしていく。
　朝早くから一日ずっと動きっぱなしだった私の体には、もう起きている余力は残っていない。

　温かいものが耳元をくすぐって額に触れたけれど、眠りの波にさらわれて意識を完全に手放した私には、何も届かなかった。