恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
9. 好きにならないわけないだろう? 【修平side】
ベッドサイドに腰かけたまま、俺の腕の中で眠る杏奈を見下ろす。
いつもくるくると表情豊かに動く瞳は、今は静かに閉じられている。
肩まで伸びた少しクセのある柔らかな髪が、頬にかかっていてくすぐったそうに見えて、指先でそっと払った。
その指が頬を撫でたせいか、閉じている瞼がピクリと震えた。
せっかく寝たとこなのに、起こしたら可哀想だよな。
もう少し彼女の眠りが深くなるのを、このまま座って待つことにした。
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アンジュを「アン」と呼ぶたびに、彼女の体がピクリと反応することに、割と早いうちに気付がついた。
ああ、そうか。「杏奈」だから、彼女も「アン」って呼ばれているんだろうな。
そう思い当たったら、アンジュを「アン」と呼ぶ回数が自然と増えた。
これまでは「アンジュ」と呼ぶのも「アン」と呼ぶのも気分次第だったけど、彼女が一瞬止まるその姿が小動物みたいで可愛くて、ついつい「アン」と言ってしまう。
でもいつまで経ってもそれに慣れない彼女の姿を見ているうちに、俺の方が彼女のことを「杏奈」と呼びたくなってしまった。だからついついもっともらしい理由を付けて、「杏奈」と呼ぶことに決めた。
ついでに俺のことも名前で呼ぶように「お願い」すると、彼女は顔を真っ赤にして抵抗していたけど、俺の強引さに負けたようだった。
俺のちょっとした言動ですぐに赤くなるその姿が可愛くて、何かにつけ触れたくなる。
彼女の緩く波打つ髪は、見た目も触り心地もアンジュとよく似ている。だからつい、気軽に撫でてしまうんだ。
これって良くないよなぁ…。
頭ではそう思っているのに、事あるごとに彼女に触れてしまうのを俺はやめられなかった。