恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 気付くと、杏奈の部屋の前に立っていた。
 春の嵐にあおられる葉のように、何かに押された俺は、気付くと杏奈の部屋の前にいた。
 そのまま踵を返すのが正しいんだと分かっているのに、根が生えたように足が動かない。

 小さくドアをノックした。少しの間、ドアの前で佇んでいたけれど部屋の中から気配はしない。
 時刻はもう十一時になろうとしている。毎朝早くから頑張っている彼女ならもう寝付いている時間だ。
 頭では分かっているのに足が動かない。
 垂らした両手を握りしめた。

 次の瞬間、目の前のドアが静かに開いた。

< 150 / 283 >

この作品をシェア

pagetop