恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
気付くと、杏奈の部屋の前に立っていた。
春の嵐にあおられる葉のように、何かに押された俺は、気付くと杏奈の部屋の前にいた。
そのまま踵を返すのが正しいんだと分かっているのに、根が生えたように足が動かない。
小さくドアをノックした。少しの間、ドアの前で佇んでいたけれど部屋の中から気配はしない。
時刻はもう十一時になろうとしている。毎朝早くから頑張っている彼女ならもう寝付いている時間だ。
頭では分かっているのに足が動かない。
垂らした両手を握りしめた。
次の瞬間、目の前のドアが静かに開いた。