恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
部屋に戻ると、「杏っ!」と叫ぶように言いながら父が抱きついてきた。
「ヒロ君……」
「ごめんな、杏。話しをきちんと聞かずにあんな態度をとった俺が悪かった…」
「ううん、私こそ、嫌いだなんて言って、ごめんなさい。大好きだよ、パパ。」
「あんなぁ~~」
半泣きの父の背中をポンポンと叩いた母が、「さあ、座って。仕切り直しましょう」と明るい声でそう言った。
席に戻ると、心配そうにしている修平さんに「おかえり」と言われ、「飛び出してしまってごめんね。ただいま」と返した。
それからすぐに、デザートが運ばれてきて、みんなでそれを味わった。なぜか父の態度の硬さが取れていて、不思議には思ったけれど、その場の雰囲気が和やかだったので、そのことに言及はしなかった。
デザートが済んだ頃合いを見計らって、私は修平さんとの馴れ初めを二人に話した。
階段から落ちた私を庇ってくれたこと。そのせいで彼が足を捻挫してしまったこと。火事のことと、その後の彼からの提案。順を追って、話している間、誰も何も言わなかった。
そして、今は修平さんのことが大事で、彼も私のことをとても大事にしてくれて、一緒にいるとすごく幸せなこと。
話をしている私の隣で、修平さんが時々温かなまなざしを送って、微笑んでくれる。
目の前の母は常時楽しそうで、斜向かいの父は、少し寂しそうに眉を下げたままだった。
「最初から本当のことを言わなかったのは、反省しています。ごめんなさい。でも、動けない彼の為に、一緒に暮らしたことは後悔してません。私、これからも修平さんと一緒にいたい……。一緒に暮らすことがだめならきちんと他にアパートを借りるから、彼とのお付き合いを認めてほしいの。お願いしますっ!!」
両親に向かって深く頭を下げた。