恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
「俺からもお願いします。杏奈さんのこと、真剣に考えています。大事にしますので、どうかお付き合いをお許しください。」
私の隣で修平さんも頭を下げる。二人で黙って頭を下げ続けた。
「もう、いい…」
テーブルの向こうから父の低い声が聞こえる。
やっぱり、認めてもらえないの……。
そう思ったらじんわりと涙が浮かんできた。
「二人の言いたいことは分かった。顔をあげなさい。」
言われた通りに顔をあげると、困ったような、でも優しく見守るような瞳とぶつかる。
「杏奈はもう、小さなままじゃないんだな…。いつまでも俺の手の中にいてほしかったけど、そういうわけにはいかないって、どこかで分かっていた気がする…」
「ヒロ君……」
「瀧沢さん…いや、修平くん。」
「はい。」
父は修平さんの目をしっかりと見つめて、一呼吸置いてから口を開いた。
「杏奈のこと、よろしく頼みます。」
そう言って頭を下げた。
「ありがとうございます。」
修平さんも頭を下げ返す。
頭を上げた父が一言、「泣かせたら、ゆるさないけどな」と低い声で付け足したので、隣の母が大笑いした。