恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
「そのことがあってから、私は母の仕事のことを外では口に出さなくなったの。修平さんに言ったみたいに『仕事で忙しい』とか『出版関係』とかって、ぼやかした言い方をしてね。特に大学では文学部だったから、『橘ゆかり』を研究している学生とか居て、なんか逆の意味で言いにくくもなって。」
「ああ、それは言いにくいかもな。」
「うん、すごく仲良くなった友人にしか打ち明けなかったの。その彼女とは今もたまに会ったりするくらい仲良くしてるよ。」
「いい人なんだね。」
「うん。」
「なるほど、そんなことがあったら俺にも最初から言うのは難しいよな。」
「うん…でも、途中からは『母のこと言わなくちゃ』と思っていたんだけど、なかなか言い出せなくて、修平さんのこと信用してない、とかじゃないの。なんか、時間が経てば経つほど『出し惜しみ』してるみたいな感じになって言い辛くなってきて……本当にごめんね。」
「そのことなら本当にもういいんだ、杏奈。俺も最初の食事の時に、由香梨さんのこと気付かなかったし。本とか新聞で『橘ゆかり』の写真は何度かみたこともあったのに。」
「それは仕方ないと思う。だって、母はプライベートと『橘ゆかり』の時の外見を完全に分けてるから。」
母は、普段は黒縁眼鏡で長い髪を下ろしたままにしている。執筆中は髪を括っているけれど、大体はラフな格好で化粧もしない。とくに締め切り前になると、いつ顔を洗っているかも分からない。本人曰く、鬼気迫る形相になるからそれを見られたくなくて、書斎に籠っているらしい。
一方『橘ゆかり』として公式の場に登場する時は、今日みたいに着物とまとめ髪、そしてコンタクトだ。プロのメイクスタッフが化粧をしてくれるので、その才能と同様の眩い姿に変身する。
そんな彼女が同一人物だと気付くのは、母に一二度会っただけの人には無理だと思う。父は例外だったけど。
ちなみに母の旧姓は「立花由香梨」とだということを修平さんに話すと、「ほぼ本名だったんだね!」と驚いていた。
「ああ、それは言いにくいかもな。」
「うん、すごく仲良くなった友人にしか打ち明けなかったの。その彼女とは今もたまに会ったりするくらい仲良くしてるよ。」
「いい人なんだね。」
「うん。」
「なるほど、そんなことがあったら俺にも最初から言うのは難しいよな。」
「うん…でも、途中からは『母のこと言わなくちゃ』と思っていたんだけど、なかなか言い出せなくて、修平さんのこと信用してない、とかじゃないの。なんか、時間が経てば経つほど『出し惜しみ』してるみたいな感じになって言い辛くなってきて……本当にごめんね。」
「そのことなら本当にもういいんだ、杏奈。俺も最初の食事の時に、由香梨さんのこと気付かなかったし。本とか新聞で『橘ゆかり』の写真は何度かみたこともあったのに。」
「それは仕方ないと思う。だって、母はプライベートと『橘ゆかり』の時の外見を完全に分けてるから。」
母は、普段は黒縁眼鏡で長い髪を下ろしたままにしている。執筆中は髪を括っているけれど、大体はラフな格好で化粧もしない。とくに締め切り前になると、いつ顔を洗っているかも分からない。本人曰く、鬼気迫る形相になるからそれを見られたくなくて、書斎に籠っているらしい。
一方『橘ゆかり』として公式の場に登場する時は、今日みたいに着物とまとめ髪、そしてコンタクトだ。プロのメイクスタッフが化粧をしてくれるので、その才能と同様の眩い姿に変身する。
そんな彼女が同一人物だと気付くのは、母に一二度会っただけの人には無理だと思う。父は例外だったけど。
ちなみに母の旧姓は「立花由香梨」とだということを修平さんに話すと、「ほぼ本名だったんだね!」と驚いていた。