恩返しは溺甘同居で!?～ハプニングにご注意を!!

　冷めかけのコーヒーをゴクリと飲み干して、急いで立ち上がった。
　食べた食器を下げようと、瀧沢さんの食器に手を伸ばした。

　お皿を掴もうとした私の手を、彼の大きな手がスッと掴んだ。

　「出来ることがあれば、やってくれるんだったよね。」

　立ち上がった私を見上げて、ジッと見つめてくるその瞳の奥に、今まで見たことのない熱のようなものを感じて、思わず手を引っ込めようとした。
　すると、彼の手が「逃さないよ」と言うように、グッと力が入るのを感じて、体が熱くなる。
　
　「や、、あの、手を、はなして…」

　「お願い、聞いてくれるかな？」

　私の瞳は彼の綺麗な瞳に捕えられたまま逸らすことすら叶わない。
　瞳を一ミリも動かすことすら出来ない私に、彼は、ゆっくりと、甘く、微笑んだ。
　足が一瞬ふらりとした。
　握られた手はじっとりと汗ばみ、心臓はバクバクと荒れ狂って、もう何がなんだか何も考えられない。

　「わ、分かりました！！」

　気付いたらそう叫んでいた。

　「良かった。」

　彼は、心底ほっとしたというように破顔して、「良かった」と囁きながら私の手の甲を指先で一撫でしてからその手を引いて行った。

　「――――――！！」

　ただでさえ羞恥で足が震えているのに、その笑顔を見て完全に力が抜けてしまった私は、ストンと再び椅子に腰を落とすことになった。


　――――神様、恩返しは楽じゃありませんっ！