恩返しは溺甘同居で!?～ハプニングにご注意を!!

　それからしばらく川沿いの歩道を桜を見ながらゆっくりと進んでから、住宅街の道に入って行き、私には何となくの方向しか分からないまま、瀧沢さんの家まで帰りついていた。
　
　全然迷わなかったし、時間もぴったり…、とアンジュの誘導力に心底感心しながら門をくぐり、アプローチを歩いていると

　「おかえり。」

　声がした方を見ると、テラスの窓から瀧沢さんが顔を出していた。

　「ただ今戻りました。」

　「どこ回って来たの？迷わなかった？」

　「はい。アンジュさんについて行っただけなのですが全然迷いませんでした。アンジュさん、すごいです。あ！河川敷の桜のところを通りました！早朝の川辺の桜って本当に綺麗ですね！私、こんな朝早くにあの河川敷に行ったことがなかったので、感動しました！」

　突然興奮しながら勢い良く喋りだした私に、瀧沢さんは一瞬目を丸くして、その後「ぷっ」と小さく噴出してから肩を震わせながら笑い出した。

　「ごっ、ごめんなさいっ。喋りすぎですね…わたし。」

　真っ赤になって狼狽える私を見て、瀧沢さんは何とか笑いを収めて微笑んだ。

　「笑ってゴメン。本当に桜が好きなんだね。昨日もうちの庭の桜に見惚れてたみたいだし。」

　「…スミマセン。」

　微笑みながらみつめられると、ますます恥ずかしくなって、俯いてリードをグッと握りしめた。

　「謝らないで。からかうつもりじゃなかったんだ。アンジュの散歩ありがとう。きっとアンジュは君に河川敷の桜を見せたかったんだと思う。そうだよな、アン。」

　瀧沢さんは最後の台詞を言いながらアンジュの方を見た。言われたアンジュの方は、嬉しそうに尻尾を振りながら、舌を出してハッハッと呼吸している。
　
　「散歩の後は水分補給だね。中に入っておいで。あ、その前にアンジュの足を玄関の横の洗い場で洗って貰えるかな？」

　「は、はい。」

　私は言われた通りにアンジュの足を洗ってから、家に上がった。