恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!


 「この絵本を読めるようになってから、私はあんまり泣いて母を困らせることもなくなったらしいの。流石に大きくなってからは読むことも少なくなったんだけど、落ち込んだ時とか、自分を励ましたい時に読むと元気になれるんだ。」

 「素敵な話だね。」

 「うん。今でも世界中のどんな本よりもこの本が一番大好きなの。でも……」

 両掌にある絵本に目を落とすと、無残な姿にやっぱり胸が痛む。

 修平さんの腕の中で沢山泣いたから、今は自分の中で事実を受け入れることが出来ていると思う。
 でも「悲しい」と思うことを止められない。

 「もし杏奈さえ良ければ、その本を俺に預けてもらえないかな?」

 「修平さんに?」

 「うん。絶対になんとかする、とは言えないんだけど…」

 私は修平さんの瞳を見て、それから頷いた。
 彼は私が差し出した絵本を大事そうにそうっと受け取った。

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