恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
7. 二人と一匹暮らし、始めました。
次の日。
出勤前に朝食の支度とアンジュの散歩を済ませる為に、頑張って早起きをした。
実家を出てから初めての『五時起き』。外はまだ暗い。眠い目を無理やりこじ開けて布団から勢いよく出た。
足音を立てないように気を付けながらキッチンの方に行くと、リビングの定位置で寝ていたアンジュが起きていて、尻尾を振りながら寄って来た。
「おはよ、アンジュ。」
小さな声で朝の挨拶をして彼女の頭を撫でる。
「みんなのご飯の準備が出来たらお散歩に行こうね。」
そう言うと、アンジュは嬉しそうに尻尾を振って私の体に頭を擦り付けた。
キッチンに入って、手を洗ってから朝食の準備を始める。
昨日どこに何があるかは一通り聞いておいたおかげで、料理の準備がスムーズに取り掛かれる。
玉子焼きを焼いて味噌汁を作る。玉子焼きは少し焦がしてしまったけれど。
昨日の夜にセットしておいた炊飯器のご飯がもうすぐ炊けそうだ。
冷凍庫に入っていた塩鮭をグリルにセットして、焼いている間に炊き上がったご飯でおにぎりを作ることにした。
「あっつ~いっ!」
炊き立てのご飯はラップ越しでもアツアツだ。
右に左に細かく動かして、なるべく熱いのが伝わらないように動かすけど、三個目を握るころには両掌が真っ赤になっていた。
大目に作ったおにぎりのうち二つをよけて、残りは皿の上に並べた。
「これで修平さんのお昼に足りるかなあ…」
同年代の男性がお昼に食べる食事の量が良く分からなくて、私は大き目のおにぎりが五個乗ったお皿を眺めながら「う~ん、」と唸った。
「うん、充分足りるよ。美味しそうだね。」
頭の上から突然声が降ってきてビックリした。
声の方を見上げると、私の斜め後ろに修平さんが立っていて、おにぎりのお皿を見下ろしている。