溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
だけど、元から大して強くないお酒には、案の定飲まれそうになる。
「おっと……大丈夫?」
「はい、すみません」
「帯、少し緩めましょう。身体に負担をかけているはずですから」
酔いが回りだすと少しずつ力が抜けてしまう私は、手にしていたグラスをテーブルに戻す際に倒しそうになって、しっかりしなくてはと気を張る。
だけど、彼がすぐに手を添えてくれたおかげでグラスは無事だったし、帯に隙間を作ってもらえて呼吸まで楽になった。
「どうですか? うちの着物は」
「あっ、すみません。せっかく着ているのに何の感想も言わずにいて……。これは、社が用意してくれたんです。でも着付けの時にひと目見ただけで、心が躍りました」
「どの辺が?」
着物の話になると、彼の表情がにこやかになる。口角が上がり、楽しそうなのだ。
きっと本当に仕事が好きなのだろう。それに、家業を渋々手伝っているわけではないと伝わってくるよう。