溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「まず、色が好きです。女性らしくて、でも可愛らしすぎない大人のピンクっていうんですか? こういう着物って、所作まで気を使うようになるものなんだなぁって……あっ、でもグラスを倒しそうになりましたけど」
「あははは、そうだね。だから、三藤さんは放っておけない感じがするよ」

 放っておけない感じがするって……どうしてそんなことを言うの?
 二度と現れるなって言ったのは、彼なのに。

 だけど、あの時も着物が濡れてしまうのを厭わず、番傘を渡してくれた。
 結局助けられてしまったと、複雑な思いを抱えながら帰宅したのだ。


「今日のお見合いのこと、話してもいいですか?」
「もちろん」

 私が話題を振ると、彼は座り直してからシャンパングラスをテーブルに置き、膝頭を私に向けた。


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