溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「えっと……相手が私だとご存じで、今日いらっしゃったんですよね?」
「そうですよ。いくつか条件を出して、当てはまる女性がいればお願いしたいと申し出ました」
「……八神さんは、お見合いをしたかったんですか?」
そもそも、彼ほどの男性ならお見合いなどしなくても、普通に恋愛結婚ができるはずだ。それも、『この指とまれ』とでも人差し指を立てようものなら、世の中の多くの女性が群がるだろう。
彼が最低最悪なオオカミ御曹司と知らなければ、この前の雨の日に言われた言葉がなければ、昨夜の一件を知らなければ、きっと私も――。
「ええ。今回ばかりは、私がお見合いをしたいと言いました。これまでも祖父や父に推しきられる形で望まぬ見合いの場はありましたが、今回は初めて自主的に動きました。なので、祖父や父も驚いていたんですよ」