溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
普通のことを話すように、淡々としているけれど、日常的に見合いの話がある時点で住む世界の違いを見せられたようだ。
それに、望まぬ見合いにも出向いていると聞かされたら、今日はどうだったのか気になってしまう。
「……私なんかが相手で、大丈夫だったのでしょうか。あの、実は昨夜、八神さんをお見かけしまして」
「あぁ、もしかして女の子を車で送った時かな? あの界隈はStationiaさんがありますよね」
「特別な女性がいらっしゃるなら、私とお見合いなどする必要はないと思うんです」
だって、すごく綺麗だった。
モデルのようなスタイルに、センスのいい服装。耳触りのいい声はいかにも女性らしくて、彼を名前で呼んでいたし。
「それとこれは別といいますか……。昨日の女性は友達ですよ。異性の友人くらい、三藤さんもいるでしょう?」
「……いません」
「本当に奥手な人なんですね、あなたは。そういうところがたまらないんだけどね……」
しれっと呟いた最後のひと言に、私の胸が大きく跳ねてしまった。