溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「次は、私の話を聞いてもらえますか?」
「は、はい……」

 シャンパーニュを注ぎ足した彼が、ふうっと息をついてから私をまじまじと見つめてくる。


 放っておけない。
 そういうところがたまらない。

 この数分で言われた言葉の意味を知りたくなる。
 それはきっと、期待してしまっているからだ。

 嫌いになると決めていたのに、彼といるとドキドキしてしまう。
 本当は紳士的で素敵な人だったらいいと、願ってしまう。


「先日、私に仰ったこと、覚えていますか?」
「先日とは……あの雨の日ですか?」

 そうです、と相槌を打った彼は、口元にグラスを寄せた。


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