溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 自分が言ったことを思い出し、その刺々しさに心の傷が疼く。
 それに、再会した時の彼は、私のことなんてすっかり忘れていた様子で……。


「三藤さんは、あなたの連絡先や、花火大会の夜の出来事を忘れろと言ったんです。それだけでなく、私に遊ばれたとは思いたくないと」
「……はい、確かに申し上げました。でも、それは……っ!!」

 それは――あなたがオオカミ御曹司だから。
 片想いが成就することなんてないのに、キスも初めても奪われたのが悔しかった。それに、お酒で覚えていない自分の失態も、消してしまいたくて……。


 そんな言い訳をしようとする私の唇を、彼の指先が封じた。
 たったそれだけの仕草が、あまりにも色っぽくて、触れられた唇まで火照っていく。


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