溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
やっぱり、八神さんは――。
「最低です。あなたは今、私にそう言いたいのでしょうね」
「っ!!」
先回りした彼に、言葉を盗られた。それすら悔しいのは、文句のひとつも言えていないから。
だけど、すべては私があの雨の日に彼を侮辱したと思われているからだ。
「八神さん、私があなたの気分を害してしまったことは、心からお詫びします。だけど、周りの人の労力や時間まで巻き込むようなやり方は好きじゃありません」
「そうでしょうね。私も正しいとは思っていません。でも、こうするしかないと思ったんです」
ことごとく冷たい物言いに、彼の本性を見た気がして背筋が冷える。
酔いも覚め、少しでも彼に再び心を奪われかけていた自分が情けなくも思う。