溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「二度と会わないつもりでしたが、気が変わったんです。あなたのような他の男に染まっていない女性は、じっくり楽しまないと勿体ないと思ったもので」
「じ、じっくり!?」
「三藤さん、未経験でしょ? キスくらいはしたことがあるでしょうけど……それでも、最後にキスをした日までは何本指を折って数える必要がありますか?」
「え、あのっ、そのっ」
そんなことを聞かれても困ると狼狽えたら、彼はそれまでの冷たい表情を崩し、破顔した。
「本当にあなたって人は……」
グラスを離した手は、そのまま私の頬を包み込む。
ちょっと指先が冷たくて、身を捩っただけなのに、それすら彼は愛おしそうに見つめてきた。
「気に入ったよ」
「えっと、あの、だからそのっ……気に入ったと言われましても」
彼はオオカミ御曹司。
このまま流されたら、今度こそ食べられてしまう。
あの日、本当に何もなかったのだとしたら、今日こそはきっと一線を越えようとしてもおかしくない。
そのために、会長や社長の目の届かないこの部屋に連れ込んだのだろうし、彼への償いはつまり身体で……。