溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
私は持ち込んだパジャマを着ているけれど、彼はガウン姿だ。
眠っている間にはだけた胸元が視界に入って、慌てて身体を仰向けにした。
「咲は何時に出るの?」
「えっ!?」
昨夜までは“三藤さん”とか“あなた”って呼ばれていたのに、一夜で砕けた彼の口調に驚かされた。
彼は隣で肘を突いて私を見下ろし、六時半を表示しているベッドサイドのデジタル時計を手にしている。
「えっと、ここからだと家よりも近いので、七時四十五分には出ようと思ってます」
「じゃあ、鍵渡しておくね」
起き上がった彼は広い寝室を歩き、壁に沿って置かれている棚の上から、合鍵を手に取った。
「カードだから、折り曲げたりしないようにして。もし開けられないようなことがあったら、フロントに言って」
「……はい」
欠伸をしながら寝室を出て行く彼の背を見送っていたら、ガウンの帯を解き始めたので、慌てて視線を逸らした。