溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「あぁ、でも少し前まではありました。と言っても時々だけどね。外泊した時に、真っ直ぐ出勤することもあったもので」
外泊と聞いて、他の女性と過ごした翌朝だと察してしまった。
だって、ホテル住まいをしている彼が、外泊をする必要がある時って、そういうことだとしか思えなくて。
「運転手さんをお待たせしているんですよね? 早く行かないとダメです!」
「はいはい。じゃあ、行ってくるよ」
「っ!! い、行ってらっしゃい、ませ……」
私の髪に、勝手にキスを落としてから出て行った彼の姿が、忘れられない。
これから毎朝、こんな時間が続くの?
それに、彼が帰ってこない夜があったらと思うと、想像だけで胸の奥が切なくなる。
オオカミ御曹司だって分かってるのに。
彼の恋愛感情が私に向くことなんて、あるはずがないのに……。