溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
朝食は気分で食べるけど、用意は不要。
クリーニングに出しているスーツとワイシャツは、定期的にフロントから専属のコンシェルジュが届けてくれるから、来たら受け取ること。
書斎には、会社の情報があるから立ち入り禁止。
もし自宅に帰るようなことがあれば、前もって連絡すること。
昨夜言われた約束事を今一度思い出しながら、慣れないルートで出勤する。
目新しい景色は新鮮ではあるけれど、落ち着かないものだ。
そして、私の手にあるのは、運転手の到着を待つ間、八神さんが書き記してくれた連絡先のメモ。
『急いで書いたから、走り書きでごめん』と言われたけれど、女性の私でさえ感嘆するほど丁寧な文字が並んでいる。
ちょっとだけ右肩上がりなのは、走り書きのせいだろう。