溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
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ホテルにまっすぐ帰宅した私は、適当に夕食を作って待っていた。
二十時を半分ほど過ぎた頃、部屋の鍵が開けられた音が聞こえて、小走りでリビングを出て、玄関で彼を迎えた。
「ただいま」
「っ!! お、おかえり、なさい……」
「お出迎えありがとう」
朝と同じように髪にキスをひとつ落とし、甘い笑顔を見せた彼は書斎へ入っていく。
私はドキドキしながらもキッチンに戻り、作っておいた料理を温め直した。
「もしかして夕食作ってくれた? いい匂いがする」
「はい」
「助かるよ。実はすごくお腹が空いてたから、ルームサービスでも頼むつもりだったんだ」
書斎にバッグを置いた彼は、Yシャツ姿でキッチンに入るなり、私を背中から抱きしめてくる。
「なにを作ってくれたの?」
「秋野菜をたくさん使ったスープと、ハンバーグです。大したものじゃないんですけど」
「ありがとう。嬉しいよ、すごく」
レードルを持つ手が止まる。
抱きしめられたまま耳元で囁かれても、どうしていいのかわからないのだ。