溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 どれほど高価なのか見当がつかず、恐る恐る袖を通す。
 淡いクリーム色の地に、牡丹や桜、菊などが描かれ、小ぶりな花々のはっきりした色使いがなんとも可憐で気に入ってしまった。
 それに、輪奈織りの七宝繋ぎの帯は、華文が色彩豊かに織り込まれていて、後姿が明るく上品だ。
 一気に背筋がシャンと伸び、綺麗に着付けてもらったら自分が生まれ変わったように思えた。


「よくお似合いですよ」

 着付けを手伝ってくれている女性スタッフに褒められると、くすぐったい気持ちになる。それに、姿見に映る私が着物に着られているようで、自分と目を合わせるのも恥ずかしいくらいだ。


「咲、入っていい?」
「っ……はい」

 着付けの間、別室にいた彼が戻ってくると、その凛とした姿に見惚れてしまった。


「社長は、ご依頼いただいていたお召にされたんですね。よくお似合いでございます」
「ありがとう。西陣は着心地も最高ですよ。色合わせもこれで正解でしたね」

 淡いグレーの着物に黒地の古典柄の帯がよく映え、ブルー系の羽織も彼によく似合っていると思った。


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