溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
溺れて染まるは彼の色
先日いただいた加賀友禅の着物は、彼が会社から衣桁を持ってきてくれて、綺麗に飾ってある。
見るたびにため息が漏れるほど素敵で、またこれを着て出かけたいと思うようになった。
元から和装は好きな方だったし、簡単な着付けを習ったこともある。
だけど、ここまで本格的なものを前にすると、生活まで丁寧になってきた。
その影響なのかは定かではないけれど、『最近あまり食べなくなったし、なんだか細くなったよね』なんて、同僚にも気付かれるほど少し痩せてきた。
間食をせず、姿勢を正して過ごすようにしたら自然と贅肉が落ちたようだ。
だけど、八神さんはあまり好ましいと思ってくれていないようで。
「咲、もっと食べて」
「食べてますよ。今日だって一緒にお夕飯を食べたじゃないですか」
キングサイズのベッドで、私を後ろから抱きしめている八神さんは不服そうだ。
「この辺とか、もうちょっとやわらかい方がいいなぁ」
「っ、ちょっ……なにしてるんですか!?」
彼の指先が私のお腹や太もものあたりを辿り、思わず身を捩った。